【コラム】早期発見のための不調のサイン

メンタル不調は、ある日突然現れるわけではありません。
多くの場合、「心・体・行動」のいずれか、あるいは複数の側面にいつもと違うサインが現れています。
これに気づけるかどうかが、早期発見と対応のカギになります。
心、体、行動の3つの側面に分けて、具体的なサインをご紹介します。
1. 心(精神面)に出るサイン
部下の感情や思考に現れる変化です。直接見えにくい部分ですが、会話の中や表情から察知できます。
- 感情の起伏が激しくなる:急にイライラしたり、怒りっぽくなったり、かと思えば急に落ち込んだり、涙もろくなる。
- やる気の低下・無気力: 以前は意欲的に取り組んでいた業務や趣味に対し、関心を示さなくなる。「どうでもいい」「何もしたくない」といった発言が増えることも。
- ネガティブな発言の増加: 「自分なんてダメだ」「どうせうまくいかない」といった、自己否定的な言葉や悲観的な言葉が増える。
- 不安感や焦燥感: 「またミスするのでは」「将来が不安だ」といった漠然とした不安を口にしたり、落ち着きがなくなったりする。
- 集中力や判断力の低下: 簡単な業務でミスが増える、話が頭に入ってこない、決断に時間がかかる、報連相が滞るなどの変化が見られます。
- 表情の変化: 笑顔が減り、表情が暗い、目つきがうつろ、または険しい表情でいることが多くなる。
2. 体(身体面)に出るサイン
心の問題が身体に症状として現れることがあります。直接尋ねにくい場合でも、客観的に観察できるサインです。
- 睡眠の変化: 寝つきが悪くなる、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまう、あるいは逆に寝すぎてしまう、業務中に居眠りをする。
- 食欲の変化: 食欲がなくなる、食事の量が極端に減る、または逆に過食になる。急激な体重の増減も注意が必要です。
- 身体の不調: 頭痛、めまい、動悸、息苦しさ、胃痛、下痢、便秘、肩こり、腰痛などが続く。病院に行っても原因がはっきりしない場合もあります。
- 疲労感: 倦怠感が続き、朝から「だるい」といった様子が見られる。休日を挟んでも疲れがとれない。
- その他: 口の渇き、手足の震え、発汗、声のトーンの変化(小さくなる、かすれる)など。
3. 行動(言動・態度)に出るサイン
最も気づきやすい変化です。普段の部下と比較して違和感を感じたら注意しましょう。
- 勤怠の変化: 遅刻や早退が増える、欠勤が増える、無断欠勤がある、勤務中に長時間席を外すことが多くなる。
- 業務遂行能力の変化:
- ミスの増加: これまでしなかったような単純なミスやケアレスミスが目立つようになる。
- 効率の低下: 業務量が同じでも、以前より時間がかかる、残業が増える。
- 報連相の減少: 上司や同僚への報告・連絡・相談が減る。
- 仕事への意欲低下: 会議での発言が減る、新しい業務に消極的になる、簡単な業務でも指示を求めることが増える。
- 人間関係の変化: 周囲との会話が減る、人との交流を避けるようになる、ランチを一人で食べることが増える、人付き合いが悪くなる。
- 身だしなみの変化: 服装や髪型が乱れる、清潔感がなくなる、同じ服を着ていることが多いなど、外見に気を遣わなくなる。
- 不健康なストレス解消行動: 飲酒量や喫煙量が増える、ギャンブルや衝動買いが増えるなど、自制が効かない行動が目立つようになる。
- 言動の変化: 挨拶をしなくなる、返事が曖昧になる、不平不満を口にすることが増える、攻撃的な言動が見られる。
サインに気づくための3つのポイント
1.「本人のいつも」との違いを見る
→ 周囲と比べるのではなく、その人自身の“変化”を知ることが早期発見の基本です。
2.複数のサインが重なっていないか確認する
→ 心・体・行動のうち、2つ以上に変化が見られる場合は要注意です。
3.変化が1〜2週間以上続いているかを見る
→ 一時的な疲れではなく、継続して見られる場合は、声かけや支援を検討しましょう。
上司にできること
- 小さな変化に気づいたら、無理に聞き出さず、あたたかく見守る声かけから
- 「最近、少し元気ないように見えたけど、大丈夫?」といった具体的かつ優しい問いかけを意識
- 必要に応じて、産業医や人事など社内外の専門機関への適切な連携も視野に入れましょう
おわりに
「なんとなく違う気がする」その感覚が、部下を支える第一歩です!
大切なのは、完璧に見抜くことではなく、気づこうとする姿勢と話しかけられる関係を日頃から育てること。
ラインケアは、特別な技術ではなく、「ちょっとした気づき」と「ちょっとした声かけ」の積み重ねです。
明日、部下のいつもの様子を、少しだけ意識して見てみませんか?

