【コラム】正当クレーム対応の基本:応答
スムーズな応答へ導く5つのステップ

クレーム対応は、単なるトラブル処理ではなく、顧客との信頼を再構築する重要な機会です。
ここでは、よくある事例をもとに、実際の現場で役立つ5つのステップと、それぞれの注意点・コツをご紹介します。
事例
家電量販店で購入した加湿器が、初期不良でまったく作動しなかった。電話で問い合わせたものの「担当が不在」「折り返す」と言われ、結局対応が進まず、怒りを抑えきれなくなったお客様が直接店舗に来店したケース。
ステップ1:共感と部分謝罪 〜まずは「気持ち」を受け止める〜
対応の第一歩は、顧客の感情にしっかり寄り添うことです。
この段階での謝罪は、企業側の非をすぐに認めるものではなく、不快な思いをしたこと気持ちそのものへの謝罪です。
適切な言葉例:
- 「ご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません」
- 「ご不便をおかけし、大変心苦しく思います」
ポイント:
- 事実確認ができていない段階で、全面的に謝罪してはいけません。
- 顧客が「話を聞いてもらえた」と感じることで、怒りが和らぐことがあります。
ステップ2:傾聴と事実確認 〜しっかり聴き、正確に把握する〜
感情的になっているお客様は、聴かされていると感じるとさらに怒りが増幅することがあります。
そこで重要なのは、最初の3分間、顧客の話を8割以上話してもらう姿勢で臨むことです。
ポイント:
- 話を途中で遮らず、最後まで傾聴する。
- 「それはご不便でしたね」「お話ありがとうございます」といった共感の相槌を打つ。
- 「なるほど」は控え、軽く受け止めている印象を与えない言葉選びを心がける。
- 「いつ、どこで、どのような状況で起こったか」など5W1Hを意識して質問する。
- 必ずメモを取り、情報を整理する。
ステップ3:社内確認と解決策の検討 〜正確な判断と冷静な準備〜
情報を把握したら、社内での確認や事実関係の整理に移ります。
即答できない内容は、無理にその場で答えず、「確認のうえ、○○時までにご連絡いたします」と時間を明示しましょう。
ポイント:
- 言い訳をせず、客観的に事実を伝える。
- 一人で判断せず、必要に応じて上司や関連部門と連携する。
- 確認のために一度電話を切るなど、冷静な対応も効果的です。
ステップ4:解決策の提示と明確な謝罪 〜納得感を得る伝え方〜
解決策を提示する際には、顧客に選択の余地を持たせる言い回しを使い、一方的に決めつけない配慮が重要です。
また、事実確認の結果、自社に明確な非がある場合には、改めて謝罪しましょう。
例:
- 「初期不良であることが確認されました。大変申し訳ございません」
- 「新品と交換させていただきますが、本日中または明日の受け取り、どちらがご都合よろしいでしょうか?」
ポイント:
- 顧客の選択肢を尊重する言葉を添える。
- 解決策の内容とメリットを丁寧に説明する。
ステップ5:再度の謝意と信頼関係の構築 〜終わりまで気を抜かず〜
対応の最後には、顧客の声を寄せてもらったことへの感謝の気持ちを必ず伝えましょう。
問題が解決したとしても、印象が悪ければ信頼は回復しません。
言葉例:
- 「このたびは貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました」
- 「今後の改善に活かしてまいります」
ポイント:
- 電話を切る・店舗を出るその瞬間まで、丁寧な対応を継続する。
- 最後に「またのご利用をお待ちしております」など、関係継続を促す一言を添える。
絶対に避けたいNG行動:内容確認なしの全面謝罪
最も避けるべき対応は、事実確認を行わずに全面謝罪してしまうことです。
これは、結果的に企業の不利な立場を招き、誤解や過剰要求を引き起こすリスクがあります。
必ず「何が起きたのか」を正確に把握してから、謝罪や対応方針を決定しましょう。

