【コラム】カスハラ対策!企業が講ずべき措置

カスハラ対策が企業の義務に!

2025年6月4日、カスタマーハラスメントの防止策を企業に義務づけること等を内容とする労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下、「労働施策総合推進法」といいます。)の改正法が可決・成立されました。
近年は、カスハラに関する規制・対策の動きが、行政・企業のいずれにおいても非常に活発になっています。

参考:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律の概要(令和7年法律第63号、令和7年6月11日公布)

改正労働施策総合推進法に基づき企業が講じるべきカスハラ防止措置

(1)事業主の防止措置(33条1項)

法改正により、企業は以下の義務を負うようになりました:

「事業主は、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(以下四の5において「顧客等」という。)の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの(以下この1及び四の1において「顧客等言動」という。)により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないものとすること」

出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律要綱より

具体的には、以下の3点が求められます:

  • 方針の明確化と周知・啓発:カスハラ非容認姿勢を就業規則やガイドラインに記載し、従業員へ周知します。
  • 相談体制の整備・周知:相談窓口の設置と、相談後の対応手段・経路を全従業員に明示します。
  • 発生後の迅速な対応・抑止策:相談内容を迅速に検証し、具体的な抑止策(配置変更、関係遮断など)を実施します。

(2)相談等による不利益取扱いの禁止(33条2項)

さらに、本法では以下を禁止します:

「事業主は、労働者が1の相談を行ったこと又は事業主による1の相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとすること。」
出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律要綱より

つまり、パワハラやセクハラと同様に、事業主が、労働者がカスハラの相談を行ったことや、事実確認に協力するなどの相談対応に協力したことを理由とする不利益取扱い(例えば、懲戒・降格・解雇など)は禁止されています。

(3)他の事業主によるカスハラ防止措置の実施に協力する努力義務(33条3項)

また、企業同士の協力も求められています。

「事業主は、他の事業主から当該他の事業主が講ずる1の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならないものとすること。」

出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律要綱より

カスハラは、一般消費者(BtoC)だけではなく、企業間の(BtoB)でも問題になります。

事業主が、他の事業主からカスハラ防止措置を実施するために必要な協力(例えば、事実確認のためのヒアリングなど)を求められた場合は、これに応じる努力義務があります。

(4)教育・啓発の努力義務(34条)

さらに、企業には以下の取り組みも求められます:

  • 従業員への研修実施:カスハラとは何か、どう対応するかを定期的に教育します。
  • 役員自らの注意義務:他社の従業員への言動にも配慮するよう、役員も意識を高めなければなりません。

(5)実務的な対応ポイント

加えて、現場で実効ある対策を講じるためには、以下のプロセスが有効です:

  1. 発生しやすいカスハラ事例の抽出・類型化
  2. 判断基準・対応方針の策定と現場共有
  3. 対応Q&Aマニュアルの整備
  4. 相談→報告→記録→抑止という対応フローの明文化
  5. 定期的な研修と見直しで運用性を確保

これらは、企業文化や顧客層に合わせた「自社仕様」の構築が必要です。

なぜなら、対応基準に正解はなく、企業ごとに最適なラインを描く必要があるからです。


法改正により、カスハラへの企業対応は義務化されました!

企業は「予防」だけでなく「相談・対応・記録・協力・教育・抑止」まで一貫した体制を整備する必要があります。

まずは、自社の実態に即した方針・窓口・フロー・マニュアルを作ることから始めましょう。

以下もどうぞ参考にしてください。

参考:明るい職場応援団

明るい職場応援団 カスタマーハラスメント対策企業実例