【コラム】ラインケアを知る

疲弊する日本人?8割超が「仕事で強いストレスを感じる」

「最近、なんだか毎日クタクタだな…」

もしそう感じているなら、あなただけではないかもしれません。

実は今、多くの日本人労働者が仕事で深刻なストレスを抱え込んでいます。

厚生労働省が発表した「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活に関し「強い不安、悩み、ストレスを感じる」と答えた労働者は、なんと82.7%にものぼります。

これは前年からさらに微増しており、もはや大多数の人がストレスを感じていると言っても過言ではありません。

特に注目すべきは、同調査で30代から50代の働き盛りの世代でこの割合が極めて高いと言う結果が出ています。

また若手の20代でもメンタル不調の経験者が増加傾向にあることも別の結果から見て取ることができます。(パーソル総合研究所「メンタルヘルス不調により休職・退職した人に関する定量調査2024」より)。

このようにメンタルヘルスの問題は、事業場において非常に重要な問題となっています。

職場のメンタルヘルス対策

では、この厳しい現実の中で、私たち労働者、そして企業はどのように心の健康を守っていけば良いのでしょうか?

厚生労働省は、労働者の心の健康を保持増進するために、「4つのケア」を推奨してています。

これは、働く人々が健やかに働き続けられるよう、多角的な視点からアプローチするものです。

セルフケア自分自身で行うことができるケア
*自身のストレスに早めに気づき、適切に対処・予防する
ラインケア職場の上司や管理監督者が部下に対して行うケア
*職場環境の改善や部下の異変の早期把握と対応、メンタルヘルス不調者の職場復帰支援など
事業場内産業保健スタッフによるケア事業場内の産業保健スタッフ(産業医、衛生管理者等、保健師等)、心の健康づくり専門スタッフ(精神科・心療内科等の医師、心理職等)、人事労務管理スタッフ等が行うケア
*専門知識を持つ産業保健スタッフと、人事・総務部門の従業員などが連携して、効果的なセルフケアとラインケアが実施できるよう、企業内のメンタルヘルス対策の企画立案や推進などを行う
事業場外資源によるケア社外の専門機関や専門家を活用するケア
例:都道府県メンタルヘルス対策支援センター、地域産業保健センター、医療機関、従業員支援プログラム(EAP)など

厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」より

セルフケアとラインケアの強い絆

メンタルヘルス対策を進めるうえで、まず大切なのは私たち一人ひとりが自分の心の状態に気づき、ストレスとうまく付き合ったり、未然に防いだりする「セルフケア」です。

自分自身のSOSに気づき、早めに対処する力を身につけることが、健康を保つ土台となります。

しかし、時には「もう一人じゃどうにもならない…」と感じるほどのストレスに直面することもあるでしょう。

例えば、仕事のプレッシャーや人間関係の悩みなど、自分だけの力では解決が難しい問題もあります。

そんな時、頼りになるのが、上司が部下の心の健康を気遣う「ラインケア」です。

上司は日頃から部下の様子を見ているからこそ、ちょっとした変化にも気づきやすいもの。

部下の話に耳を傾け、適切なサポートをすることで、一人で抱え込まずに済むようになります。

セルフケアとラインケアは、どちらか一方だけでは不十分です。

自分でできること(セルフケア)と、周りからの支え(ラインケア)が手を取り合うことで、私たちはもっと強く、しなやかにストレスと向き合えるようになるのです。

管理職によるラインケアが重要な理由

なぜ、ラインケアがここまで重視されるのでしょうか?

それには、以下のような理由があります。

  • 日常的に部下を直接見る立場のため、不調の早期サインに気づきやすい
  • ストレス要因の多くが職場環境に起因し、それを改善できるのは現場を預かる管理職
  • 部下は不調を言い出しにくいため、相談しやすい雰囲気づくりが重要
  • 信頼関係のある声かけや面談が、メンタル不調の深刻化を防ぐ
  • 不調時や復職時などに、柔軟な業務調整・フォローができるのは管理職
  • 管理職が関わることで、気づき・支援・予防のすべてのフェーズをカバーできる
  • 結果として、職場全体のメンタルヘルスの質向上につながる

管理職に求められる4つの役割

1. 部下のストレス状況を把握する

日常の様子を観察し、「いつもと違う」変化に気づくことが第一歩です。

例えば、これまでなかった遅刻や欠勤の増加、表情や言動の変化は、心身の不調サインかもしれません。

普段からコミュニケーションを取り、部下一人ひとりの「平常」を把握しておくことが必要です。

2. 早期に対応し、相談・連携する

部下に不調の兆しが見えたら、まずは信頼関係を土台に「大丈夫?」と声をかけ、話を聴く姿勢が大切です。

話しやすい環境が整えば、本人から相談しやすくなります。また、必要に応じて産業医・保健師・人事担当者と連携し、専門的な支援につなげていきましょう 。

3. 働きやすい職場環境を整える

日々の業務の成果だけでなく、配分や労働時間にも目を配りましょう。

業務の偏りや過剰負荷がないかをチェックし、適宜調整することで、ストレスの原因を取り除くことができます。

加えて、定期的な声かけや雑談がしやすい職場づくりも重要です 。

4. メンタルヘルス不調の再発や悪化を防ぐ

復職後も安心して仕事に戻れるよう、継続的なフォローが必要です。

無理のない業務量から徐々に通常の仕事に戻すステップを計画し、面談や状態確認を定期的に行い、再発防止に努めましょう 。