【コラム】気になる部下への声かけに迷ったら

職場で「なんだかあの部下、元気がないな」「いつもと様子が違う気がする…」。

そう感じたとき、あなたは声をかけるべきか迷いませんか?




「もし違ったら?」「余計なお世話かな?」「どう声をかけたらいい?」そんな不安から、結局何も言えずに見過ごしてしまうこともあるかもしれません。

しかし、その一言が、部下を孤立から救い、不調の悪化を防ぐ大切なきっかけになります。

ここでは、声をかけるべきか迷ったときの考え方と、相手に負担をかけずに使える具体的な声かけのセリフ、そして注意点をご紹介します。

なぜ声をかけることをためらうのか?

部下に気になる様子が見られても、どう接していいか迷うのは、ごく自然なことです。

よくある管理職の声としては、

  • 「機嫌が悪そうだし、今は話しかけない方がいいかも」
  • 「不調かもしれないけど、もし何もなかったら気まずいし…」
  • 「仕事が立て込んでるのかも?余計なこと言わない方が…」

こうした迷いの背景には、「声をかける = 答えを引き出さなければいけない」という思い込みがあることが少なくありません。

しかし、本来、ラインケアにおける声かけの目的は、「話してもいい場がある」と伝えることにあります。

無理に本音を引き出す必要はありません。

声をかけるべきか迷ったら「GO」!その理由とは

「声をかけても大丈夫かな?」と迷うのは、相手を気遣う優しい気持ちの表れです。

しかし、メンタルヘルスの世界では、「迷ったら、まずは声をかける」ことが推奨されます。

なぜなら:

  • 早期発見・早期対応が命だから: 不調は早く気づくほど、回復が早まります。あなたの声かけが、部下が専門家や然るべき支援に繋がる最初のステップになるかもしれません。
  • 「気にかけている」というメッセージになるから: たとえ部下が「大丈夫です」と答えたとしても、「自分のことを気にかけてくれている人がいる」という事実は、部下にとって大きな安心感になります。孤立感を感じさせないことが、一番のサポートです。
  • 上司の義務だから: 企業には従業員の安全配慮義務があり、管理職はその最前線にいます。部下の異変に気づいたにもかかわらず放置することは、その義務を果たしていないことにもなりかねません。

「もし違ったらどうしよう…」は気にしなくて大丈夫です。

目的は「診断」ではなく、「気にかけている」ことを伝え、必要なら「話を聞く準備がある」ことを示すこと。

たとえ勘違いだったとしても、あなたが気遣ってくれた事実は、部下との信頼関係を深めるポジティブな要素にしかなりません。

迷ったら「声をかける」が正解

様子が「いつもと違う」と感じたら、それは声をかける大切なサインです。

部下にとって、自分の変化に気づいてもらえることは、心強さや支えになります。あなたの「気にかけているよ」というメッセージが、部下を孤立から救う第一歩になるのです。

例えば、こんなシーンはありませんか?

  • いつも明るく挨拶する部下が、最近あいさつもなく静かにデスクへ向かう。
  • 会議中の発言が減り、表情も硬い。
  • 細かい確認が得意だった部下が、珍しくミスを続けている。

このようなときにそっと声をかけられるかどうかが、不調の「予防」につながる第一歩となります。

部下に負担をかけない声かけのコツ

いざ声をかけようと思っても、「何て言えばいいんだろう?」と迷うことがありますよね。

部下にプレッシャーを与えず、自然に話を引き出すための具体的なセリフとコツを紹介します。

コツ1:具体的に「見えたこと」を伝える(決めつけない)

相手の状態を決めつけず、あなたが客観的に見て気づいたことを伝えつつ、「無理に聞き出さない」ことです。

  • NG例: 「疲れてるね?」「元気ないね、何かあった?」 (相手を決めつけ、詰問調に聞こえる可能性があります)
  • OK例:
    • 「〇〇さん、最近、少し元気がないように見えて、私は心配しているんだけど…。」
      (I(アイ)メッセージを使うことで、相手は責められていると感じにくいです)
    • 「この前のプレゼン、いつもより声が小さかったのが気になったんだけど、何か困っていることはないかな?」
      (具体的な行動を挙げることで、部下も状況を理解しやすくなります)
    • 「最近、少し顔色が良くないように見えるけど、体調は大丈夫?」
      (あくまで体調を気遣うフリから入ることで、抵抗感を減らせます)
    • (ミスが続いている部下に)「最近忙しいのかな?無理しすぎてない?」
      (ミスと言う結果は原因かもしれません。そこで直接的な指摘を避けることでプレッシャーを与えないようにしています)

※ 声をかける時は、いきなり重い話題を投げかけるより、「気づいてるよ」という温度感で十分です。
相手が話し出すきっかけになればOKだと考えましょう。

コツ2:「いつでも話を聞くよ」の姿勢を示す(強制しない)

すぐに話さなくてもいい、という選択肢を与えることで、部下はプレッシャーを感じずに済みます。

  • NG例: 「今、ここで全部話してくれ」
  • OK例:
    • 「もし何かあったら、いつでも相談に乗るからね。忙しいなら後でもいいし、話せる時で大丈夫だから。」
      (話すタイミングは相手に委ねることで、心理的なハードルが下がります)
    • 「私に話せなくても、社内の〇〇さん(産業医や保健師など)に相談するのも一つの手だよ。」
      (具体的な相談先を示すことで、部下は「一人じゃない」と感じられます)

コツ3:場所とタイミングを工夫する

人目が多い場所や忙しい時間は避け、部下が安心して話せる環境を選びましょう。

  • NG例: 大勢がいるオフィスの中央で大声で話しかける。部下が忙しそうにしているときに声をかける。
  • OK例:
    • 休憩時間や業務の合間など、少し落ち着いたタイミングを選ぶ。
    • 個室や会議室、あるいは人目につきにくい場所に誘う。
    • リモートワークの場合:チャットで「少しお話しできますか?」と確認後、短時間のWebミーティングを提案し、カメラをオンにして表情が見えるようにする。

コツ4:質問攻めにせず、ひと声かけたら待つ姿勢

部下がすぐに答えなくても焦らないでください。相手のペースを尊重し、話す準備ができるまで待つことが重要です。

  • NG例: 部下が黙っている…「黙っていないで、何かあったら遠慮なく言ってよ」
  • OK例:
    • 新たな質問をせずに、しばらく待つ

部下が話したがらない場合は、無理に問い詰めるのは避けましょう。

あなたの「気にかけている」気持ちは伝わっています。

コツ5:話しやすいように、あなた自身も少しだけ弱さを見せるのも有効

例えば:「実は私も最近ちょっと疲れ気味でさ」など、無理のない範囲での自己開示も、部下の心の扉を開くきっかけになるかもしれません。

よくある場面での「声かけ」例

  • 【例1:遅刻・欠勤が増えた部下へ】
    • 「〇〇さん、最近少し疲れが出ているように見えるけど、体調は大丈夫?何か困っていること、抱え込んでないかな?」
    • 「もし何かあったら、いつでも話聞くからね。無理はしないでほしい。」
  • 【例2:いつもと違い、元気がない部下へ】
    • 「〇〇さん、最近、いつもより元気がないように見えて、少し心配しているんだけど、何かあったかな?」
    • 「忙しいと思うけど、もし話せる時があったら、少し時間とれるから声をかけてね。」
  • 【例3:業務効率が落ちている部下へ】
    • 「〇〇さん、最近少し業務に集中しにくいように見えるんだけど、何か気になっていることでもあるのかな?」
    • 「もし業務量の調整で困っているなら、相談してほしい。いつでも力になるから。」

声かけは、部下の心の状態をいきなり変えるものではありません。
しかし、その一言が「ひとりじゃない」「見てくれている」と伝えるきっかけになります。

迷ったときこそ、「ちょっとした一言」の力を信じて声をかけてみましょう。