【コラム】バイアスに気づく習慣:決めつけをやめて言い換える
アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)は、「決めつけ」や「押しつけ」の言葉として表れることがあります。
今回はその中でも「決めつけ」に焦点を当てて、自分の言葉を見直す方法を考えてみましょう。
「○○のくせに」と言われて、どう感じますか?
たとえば、こんな表現を聞いたことはないでしょうか。
- 「新人のくせに、よく口出すね」
- 「育児中なのに、大きな仕事を引き受けるの?」
- 「女性のわりに、ハッキリしてるね」
実際、私自身も「女性のわりに発言がはっきりしている」と言われ、ショックを受けた経験があります。
こうした言葉の奥には、話し手が無意識に抱いている偏見や前提が見え隠れすると思いませんか。
一見悪意がなくても、相手を傷つけたり不快にさせてしまうことがあります。
無意識の「決めつけ」はこう表れる
では、アンコンシャス・バイアスはどのように表れるのでしょうか。
アンコンシャス・バイアスは、日々の会話の中で自然と出てきます。特に次のような言葉には注意が必要です。
① 価値観の押しつけにつながる「決めつけ」
たとえば、次のような表現です。
- 「普通はこうだよね」
- 「そんなの常識でしょ」
- 「みんなやってることだから」
これらは、自分の経験や価値観を前提にした決めつけの表現です。
私も、以前「介護中だから出張は無理だと思って、Aさんに頼んだ」と言われ、深く傷ついたことがあります。
良かれと思った判断でも、相手の意思を確認しなければ、一方的な決めつけになります。
言い換え例:
- 「私はこう思う」
- 「今までの経験では」
- 「多くの人はそうしてきたように思う」
② 能力を決めつける言葉
次に、能力を決めつけるような言葉です。
- 「どうせ無理」
- 「そんなやり方じゃダメ」
- 「転職したばかりでまだ慣れてないでしょ」
こうした言葉は「できない」という前提に立っており、相手の可能性を否定することになります。
言い換え例:
- 「かなり難しいかもしれないけれど…」
- 「私は少し心配に思う」
- 「こうすれば、もっと実現しやすくなるかも」
③ 属性による一括り
さらに、属性で人をひとくくりにしてしまう言葉です。
- 「新人だから視点が浅い」
- 「シニアだから変化に対応しにくい」
- 「外国籍だから自己主張が強すぎるかも」
これらは、相手の背景や個性を無視した判断になり、不快感や疎外感を生む原因になります。
そればかりは、ハラスメントの危険性もあるでしょう。
言い換え例:
- 「フレッシュな視点」
- 「豊富な経験を活かした提案」
- 「異なる文化の視点も含まれている」
職場でありがちな「決めつけ」の言葉
さらに具体例をいくつか挙げてみましょう。
- 「営業経験がないから、この仕事は無理だと思うよ」
- 「管理職は男のほうが部下をまとめやすいでしょ」
- 「若い人には難しい話かもしれないけど」
- 「アルバイト出身だし、リーダーはまだ早いよね」
- 「出身校を見ると、きっと真面目なタイプだよ」
- 「前職が短期ばかりだから、続かないかもね」
これらの言葉も、相手の可能性や意欲を狭めてしまうおそれがあります。
言葉は、思考のあらわれ
では、なぜこのような言葉が出てしまうのでしょうか。
それは、私たちが使う言葉には、無意識の思考や価値観がにじみ出るからです。
だからこそ、「これ、決めつけていないか?」と立ち止まる習慣を持つことが大切です。
思考に柔軟性が生まれれば、より建設的なコミュニケーションが可能になります。
次回のコラム:「押しつけ」のバイアスに目を向ける
今回は「決めつけの言葉」に注目しました。
次回は、良かれと思ってつい言ってしまう「押しつけ」の言葉について、見ていきましょう。