【コラム】ゆっくり「はしご」を登る思考習慣

ゆっくり「はしご」を登る?と聞いて、「何それ?」と思われた方もいるかもしれません。

アンコンシャス・バイアスは、私たちの思考の癖から生まれます。

だからこそ、自分の思考パターンに目を向けることで、バイアスに気づき、柔軟な発想ができるようになります。

とはいえ、バイアスは完全になくすことはできません。

しかし、気づいて立ち止まることができれば、アンコンシャス・バイアスをコントロールする第一歩になります。

そのうえで大切なのが、「推論のはしご」を一気に駆け上がらず、ゆっくり登る習慣です。

「推論のはしご」で思考のプロセスを見直す

そもそも同じ事実を見ても、人によって受け止め方や判断は異なります。

こ「“思考の飛躍」の構造をわかりやすく表したのが、組織心理学者クリス・アージリスの「推論のはしご」として図式化しました。

私たちは、次のような順序で思考を進めています

  1. 事実や経験を観察する
  2. 特定の事実だけを選んで注目する
  3. 意味づけを行う
  4. 解釈して推測する
  5. 結論づける
  6. 結論を裏づける情報を集める
  7. 確信に基づいた行動をとる

そして、このはしごを、私たちは無意識のうちに高速で駆け上がっているのです。

【職場あるある】推論のはしごを登った例

ここで、職場のアルアルを見てみましょう。

たとえば、Aさんが海外転勤のオファーを断ったという事実があったとします。

そのとき、あなたの頭の中では次のような思考が展開されていないでしょうか?

  • 「Aさんは子育て中だから、海外転勤は難しいに違いない」
  • 「やっぱりそうだ、育児中は無理なんだ」
  • 「家庭を持つ人には転勤は難しい。期待してもムダだ」

これは事実に対して意味づけ → 推測 → 一般化がなされ、Aさんだけでなく「家庭を持つ人全般」への決めつけに発展しています。

思考のスピードを落とす5つのポイント

では、推論のはしごを一気に登ってしまわないようにするには、どうすればよいでしょうか?

以下の5つの視点を意識してみてください。

1. すぐに反応しない

まず意識したいのは、「一呼吸おく」ことです。

会話や行動の中で反応したくなるひとことがあったら、一呼吸おく習慣を持ちましょう。

アンコンシャスバイアスは、高速思考とも呼ばれるため、すぐに反応すると起こりやすくなります。
これがまさしく、はしごを一気に駆け上がった状態です。
*【コラム】アンコンシャスバイアスの仕組み

2. 自分の見方の背景を知る

次にその判断は、どんな価値観や感情に基づいているかを考えます。

恐れ・不安・劣等感など、感情がバイアスを強めることがあります。

3. 推測や意味づけを検証する

そして「誰が見てもそう感じるのか?」と問い直してみましょう。

事実と解釈を切り分けて考えることが、客観性を保つ鍵になります。

4. 他の視点を探す

さらに一つの結論に飛びつかず、他にどんな解釈や選択肢があるかを俯瞰して見直します。

視点を変えることで、思考に柔軟性が生まれます。

5. 相手と話す

最後に、自分の思い込みではなく、相手の声を聞きましょう。

「話してみたら違った」と気づく場面は実はよくあります。

思い込みに気づくと、視野が広がる

アンコンシャス・バイアスは誰にでもあります。

でも、思考のはしごをゆっくり登り、「これは自分の思い込みかもしれない」と立ち止まることで、世界の見え方が変わってきます。

大切なのは、結論を急がず、検証する姿勢を持つこと。

そうすれば、視野が広がり、よりよい意思決定と対話が生まれるでしょう。